専門診療(睡眠時無呼吸症候群)
専門診療(睡眠時無呼吸症候群)
問診で睡眠時無呼吸症候群の可能性があるかどうかとそれによる症状があるかどうかの確認を行い、必要であれば検査や治療の提案をさせていただきます。後述のCPAP療法や、体位療法、口腔底機能療法での治療プランを提案させていただきますが、睡眠時無呼吸症候群の精密検査が必要であったり手術加療を要すると判断した場合は大きな病院に紹介させていただく場合があります。
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、寝ている間に一時的に呼吸が止まる疾患です。睡眠中に平均して1時間に5回以上起こり、いびき、日中の眠気や倦怠感、夜間に何度もトイレに行きたくなって目が覚めるなどの症状があればこの疾患の可能性があります。放置すると高血圧や糖尿病の発症のリスクになったり薬などの治療がなかなか効きにくくなることがあります。次第に血管・心臓・脳に大きな負担がかかり、狭心症、心筋梗塞、脳卒中などを引き起こすこともあります。できるだけ早く診断し、治療をはじめることが大切です。
また、小児の睡眠時無呼吸症候群の場合では、集中力低下に伴う学力低下、成長障害、精神発達障害などのリスクとなるため要注意です。
原因には鼻からのどにかけての物理的な狭窄のことが多いです。狭くなった気道のすき間を空気が通ることで“いびき”が生じます。睡眠時無呼吸症候群の要因は、肥満による首や喉(のど)まわりの脂肪沈着、あごが十分発育していない小顎症(しょうがくしょう)、扁桃肥大、舌根(ぜっこん)・口蓋垂(こうがいすい)・軟口蓋(なんこうがい)による狭窄など、解剖学的なものがあります。また、鼻炎やアデノイド肥大などで鼻からの呼吸の通り道が狭くなることも睡眠の質を大幅に低下させます。
他にも、脳の疾患や先天的な疾患、薬の副作用などによっても睡眠時無呼吸症候群を発症することがあります。
検査はご自宅でできる簡易検査と、専門の医療機関に一泊して行う精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査:PSG検査)があります。簡易検査は手指や鼻下にセンサーを装着し、睡眠中の呼吸などを調べます。精密検査は脳波計や心電計などを用いて行う詳細な検査です。簡易検査は重症度の睡眠時無呼吸症候群の発見に有効ですが、軽症度や中等度の発見や睡眠の質の評価には精度の面で精密検査が適しています。手術の適応なども精密検査で判断します。
治療には対症療法と根治療法があり、症状の程度や原因に応じて選択します。代表的な対症療法には、CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)とマウスピースがあります。
CPAP療法は中等度から重症度に有効な治療法です。睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を開存させて治療します。睡眠中の無呼吸・いびきが減少し、眠気の改善や高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクを下げたり薬などの治療効果を高めたりすることが期待できます。
マウスピースは睡眠時にマウスピース(スリープスプリント)を装着し、下あごを前方に出すように固定することで、上気道を広く保ち、無呼吸やいびきの発生を防ぎます。これが必要な場合は歯科口腔外科に紹介させていただく場合があります。
原因が肥満の場合は減量が根治療法であり、対症療法を組み合わせて進めます。扁桃肥大などが原因の場合は、手術を考慮する場合があります。鼻疾患を有している場合、マウスピースやCPAP療法で十分な効果が得られないことがあり、薬などの治療での改善効果が乏しい場合は手術を考慮します。
このほかに、口呼吸の予防・治療に有効な口腔筋機能療法や、寝る向きを矯正する体位療法などが有効なこともあります。